相続放棄は、死亡してから3か月ではなく、自分が相続人だと知ってから3か月以内です。

ライター依頼記事

突然届いた7千万円の支払い命令書

音信不通になっていた遠縁の叔父が7千万円ほど負債を抱えて死亡し、その近しい親族から順番に相続放棄した後、まわりまわって代襲相続人として私に裁判所から支払いの命令書が書留で届いたのです。

叔父とは私が子供の頃には交流があったのですが、40年ほど前に友人の借金の連帯保証人になってから人生の道を踏み誤られたようで、兄弟である私の親にも借金をしに来訪した姿を見たのが最後でした。その後、離婚、転職で親戚とは絶縁状態になっていました。

叔父の借金の理由

裁判所から送付された裁判記録によると、その叔父が再婚相手と二人で新興宗教法人を作り、その信徒らから借金を繰り返したようなのです。

その後、叔父は行方不明になり、その数年後の再婚相手も死んだ直後に、夫婦二人分の債務弁済を求める裁判を起こされ、唯一の被告人である叔父欠席のまま、その有罪が確定しました。

再婚相手の方にはその連れ子(X氏)や親戚等がいたようで、それらの方々は早々に相続放棄されていました。行方不明の叔父は夫婦合わせて7千万円の債務を背負う形となりました。

行方不明の叔父が背負った借金の行方

問題はその約2年後に発生しました。

行方不明だった叔父が港近くの海底に沈んでいた自動車の中から白骨遺体で発見されたのです。遺体鑑定で叔父は行方不明になった直後に死亡したものとわかりました。つまり、裁判が起こされた時には既に叔父はこの世にいなかったのです。

それでも確定した判決は揺るがず、その負債は相続問題に転化しました。

ふってわいた相続問題

まず、叔父の最初の結婚時に生まれた子供(私の従妹)に裁判所から負債の支払い命令が届きました。彼女たちはすぐに相続放棄をしたようでした。

それから1年以上経ってから、叔父の兄弟姉妹(叔父の両親で、私の祖父母に当たる方々はとっくに他界)が次順位の相続人として支払い命令が発出されたのです。

叔父の姉に当たる私の母も既に亡くなっていましたので、私がその代襲相続人として支払い命令を受けることになったのです。

初めてのことで、対応に戸惑った

裁判所から郵便をもらうのは生まれて初めて。

その当時法律のことは詳しくなく、裁判所から数千万円単位の支払い命令を受けたことに、私は驚き慌てました。同時に、叔父の妹に当たる私の叔母にも裁判所から命令書が届いたようで、叔母から私のところに電話が届きました。

死んだ人に借金があった場合、相続放棄で逃れられるが、死んでから3ヶ月以内に家庭裁判所へ手続きを出さなければならない?

一度出した相続放棄(あるいは相続の単純承認や限定承認)は撤回できない?

そんな雑学がありましたので、とんでもない借金が舞い込んだと視界が真っ暗になりました。

弁護士さんに相談することに

そこで、こちらも生まれて初めて弁護士さんに相談に。

相談に行きましたところ、

相続放棄は被相続人が死んでから3ヶ月以内ではなく、自分に相続があってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述すればよい

と教えられて一安心。

行政書士のコメント

相続開始を知ってから3か月以内であれば相続放棄することができます。

このケースの「相続開始を知ること」は、叔父が死亡したことを知り、相続人が相続放棄を行い、自分が相続人になったことを知ったとき、です。

絶縁状態であった叔父の死亡を知ることは難しいですし、叔父の死亡後、叔父の法定相続人が相続放棄を行ったことを知ることも難しいので、相続が開始されてから3か月以内に相続放棄できなかったとしても仕方ありません。ですから、「相続開始を知ってから3か月以内」としています。

しかし、死亡から3か月以内に相続放棄を行わなかった場合は、相続開始を知らなかった理由を裁判所に通知しなければなりません。このケースのように負債が多額の場合は、相続案件に詳しい弁護士に依頼し、確実に相続放棄を完了させましょう。

相続放棄が認められなかった場合、もう一度認めてもらうことは難しく、1回で解決できるように最善を尽くすべきです。弁護士探しのご相談も承ります。ご相談ください。

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手続きは無事完了、しかし…

弁護士さんの手助けで叔母の分も含めて相続放棄の手続きをすぐに行い、とりあえず裁判所からの支払い命令を回避することができました。

ただ、弁護士相談に行って裁判所からの資料を見ていた中、叔父の家系図があり、その中に奇妙な文言が書かれていたことが指摘されました。

叔父の再婚相手の連れ子であるX氏は、裁判前に相続放棄していたのですが、裁判判決が確定し、その後叔父の遺体発見されてから、相続放棄を取消していたのです。

私は相続放棄は撤回できないと思っていたのでビックリしましたが、錯誤など一定の理由があると取消しできるらしいのです。

どうしてX氏はそんなことをしたのだろう?と思うと共に、相続放棄を取消したのに裁判所の命令はなぜX氏には行かないのかと疑問が湧きました。

しかし、再婚相手の死後その分の借金を含めて裁判の被告となったのは叔父であり、本当はその再婚相手より先に叔父が死亡していたことがわかっても確定した判決は変わらず、再婚相手の負債がX氏に及ぶことはないそうです。

相続放棄について詳しくありませんでしたが、法律の世界はいろいろと難しいものとモヤモヤしたものが残りました。