行政書士の開業では、行政書士会の事務所関係の細かい規定などを遵守して、報告も義務付けれられています。一般企業のように自由に事務所を選定して、使うことはできません。
1.行政書士試験合格のあと
行政書士の登録や開業までに必要なことがあります。行政書士会に入会しなければなりません。行政書士会では、行政書士新規登録申請以外にも事務所に関して、細かい条件(規定)があります。
都道府県ごとに手続きが違う場合があるかもしれません。事前に各地の行政書士会に確認します。関東のある県などの事例をご紹介します。
事務所に関しては、行政書士登録申請書以外にも次の書類が必要になります。
(1)事務所の使用権を証する書面
事務所所在地が住民票住所地の場合は、住民票の写しのみを提出します。自宅以外の独立事務所の場合には、建物登記簿謄本と賃貸借契約書の2つを提出します。
(2)事務所の位置図
最寄り駅、停留所から事務所の予定地までの略図を要求されることがあります。
(3)事務所の平面図
事務所の位置、内部の事務機器の配置が確認できる見取図も求められることがあります。
(4)事務所の外観及び内部の写真
事務所の外観についての写真
・建物の全景
・事務所の入り口(表札の掲示予定場所などが確認できるもの)
・郵便受けの設置状況が確認できるもの
事務所の内部についての写真
・事務所の設備の配置予定場所
・事務所全体が分かるもの
行政書士事務所設置指導基準
事務所要件を満たした部屋の全方向から撮影した写真を提出する必要があります。要件を満たすため、すべての設備を写真に収めるために配置も考えなくてはいけません。
2.事務所家具、事務機器(什器・備品)など
(1)事務用机、椅子と事務所入来者控用具
自分が使うための机と椅子とお客さんが利用するための机と椅子です。「事務用机」と「事務所入来者控用具のテーブル、記載台」と同一のものでもかまわないとのことです。つまり、机1つに椅子2つで、要件を満たせる場合があります。
(2)書類保管庫と収納庫または収納棚
事務所用の保管庫と棚のことです。保管庫は、鍵のかかるものでなくてはいけません。収納棚は下記の図書棚と同一のものでもかまわないようです。つまり、鍵のかかる保管庫と、鍵がない棚で要件を満たせる場合もあります。
(3)業務用図書および図書棚
開業後は、資料のための本でいっぱいになりますが、事務所要件に業務用図書が求められています。手持ちの法律の本があれば、それを図書棚に置いておきます。
(4)電気機器など
(5)パソコン
行政書士の業務において、持ち運びする可能性も出てくるため、ノートパソコンがよいでしょう。
(6)プリンター
プリンターは、印刷の強度の理由などから、レーザープリンターがよいでしょう。特定商取引法では赤文字で印刷する必要のある契約書もあり、許認可申請などは店舗の写真を出力する必要もあるためカラープリンターにします。カラーレーザープリンターを購入すればよいでしょう。
(7)コピー機
コピーする方法は2種類あります。原稿押さえ(プラテンカバー)を開け閉めして、原稿交換しコピーする方法と、コピー機の上に自動両面原稿送り装置(ADF)を利用してコピーする方法があります。例えば、許認可などを専門業務とする場合には、大量にコピーする必要がある場合には、ADFがあるコピーを選んだ方が効率はよいでしょう。
(8)電話、ファックス
電話は携帯電話でも要件を満たすことがあります。ファックスの要件はありませんが、行政書士会などからの連絡がファックスでくる場合もあって、設置しておいたほうがよいでしょう。特定行政書士を取得しようと考えている人は、受験票がファックスで来るため、ファクスの設置は必要です。
3.登録申請後
登録申請をしてから1ヵ月ほど経つと、各行政書士会による事務所調査があります。各行政書士会の支部長などが事務所を訪問して、調査を行います。
調査の内容は、申請書に記載した事務所のレイアウトどおりに備品や設備が整っているかどうかをチェックします。調査が行われるまでに、机、イス、パーティション、書類の保管庫などの備品や設備を整えておくことが必要になります。
すべての行政書士会が訪問調査を行うわけではありません。例えば、東京都行政書士会の場合は訪問による調査はなくて、申請者本人が提出した事務所の写真をチェックだけで終わります。
都道府県によっては訪問調査でなく、違う方法で調査を行う場合もあるので、各行政書士会の調査方針をホームページでチェックするようにします。
事務所調査を無事に終えると間もなく、登録完了の通知と行政書士会の入会式の案内が来ます。
行政書士会の入会式は、各行政書士会の本部で開催されます。
4.行政書士の独立
(1)独立開業費用など必要な資金
独立開業するまでに、いろいろ費用がかかります。行政書士試験に合格しても、この資金が用意できなければ独立して事務所を開業することはできません。
(2)行政書士の登録費用
独立開業にあたっては、行政書士会への登録費用が必要になりまです。行政書士として業務を行うには、日本行政書士会連合会と各都道府県の行政書士会への登録が必要となります。都道府県行政書士連合会に入会金と登録手数料を支払います。
登録にかかる費用は、都道府県によって違いますが、約20〜30万円前後です。
(3)備品代
行政書士としての業務を行うにはいろいろな備品を用意する必要があります。主に以下の備品が必要です。
パソコン
スキャナー
プリンター
電話
FAX
インターネット機器
事務用デスク
応接机やカウンター
事務所では行政書士としての書類作成だけでなく、事務所で顧客と打ち合わせをする場合もあります。事務所の規模や仕事のすすめ方などによっても、違ってきますが、来客に対応できる最低限の準備が必要です。
(4)事務所の賃貸料
自宅を事務所にすることもできますが、事務所を別で設ける場合には、賃貸費用が必要になります。賃貸契約などの時に発生する主な費用は以下の通りです。
敷金
礼金
賃貸料(家賃)
独立して多くの顧客をつくることを考えると立地も重要ですが、賃貸料も高くなります。事務所を借りる場合は、開業後、どのくらいの売上ができるのかを事前に考えてから選定するようにします。
(5)行政書士開業の手続き
行政書士開業の概要は次のとおりです。
・事務所所在地と事務所名を決める
・都道府県行政書士会への登録申請書類を作成する
・事務所ホームページや名刺、開業挨拶状などを用意する
・都道府県行政書士会に書類を提出する
・登録証授与式に参加する
・税務署に開業届を提出する
・得意な専門分野を決める
行政書士の掲げる専門分野として一般的なのは、①建設、産廃、②運輸、交通、③外国人在留資格、④風俗営業、⑤法務、会計、⑥会社法、⑦遺言、相続、⑧著作権などです。
(6)事務所住所・事務所名を決める
事務所の住所と事務所名を決めます。事務所の住所と事務所の名前は、行政書士会への登録申請の時に必要になります。
事務所は、自宅を事務所とすることもできます。行政書士の事務所の住所は、日本行政書士会連合会のホームページで公表されるため、自宅住所を公表したくない場合は、自宅以外の事務所にしたほうがよいでしょう。事務所はレンタルオフィスでも賃貸物件でも可能です。
事務所の名前の付け方は、日本行政書士会連合会の方針に従う必要があるため、事務所の名称に関する指針を確認します。
事務所名に『行政書士』という文言を入れること、同じ地域の行政書士会に同じ事務所名がある場合は使用を避けることなどといった方針があります。方針に従って、事務所の名前を決めます。
入会式では、登録証の交付のほか、会員バッジ、規則集や名簿なの資料が配布されます。多くの行政書士と会うことができ、人脈を広げることのできる機会でもあります。名刺交換の機会があるので、多めに名刺を持参します。
入会式の後は、いよいよ開業が可能となります。