会社員のままで、副業行政書士ってできる!?

行政書士は、独立開業ができる資格です。独立開業という特徴を活用して、行政書士の資格を持つ人の中には会社員をしながら、副業として行政書士の事務所を開業できるのではないかと考えている方もいらっしゃるでしょう。すでに会社員で、副業で行政書士の仕事をしてる人もいます。

1.副業行政書士はできるのか?

副業行政書士はそう簡単ではありません。行政書士は独立開業ができる資格なので、行政書士事務所、法律事務所、法務事務所などで働く以外にもいろいろな働き方があります。

たとえば、行政書士の資格をとりたてで、独立開業して、事務所などを持って専業の行政書士として働くことに不安があるという人にとっては、副業という選択肢はとても魅力的になると思います。

実際に行政書士を副業としている会社員の人もたくさんいらっしゃいますが、副業行政書士となる場合は、土日は官公署が開いていないとか、行政書士としての業務をすべてすることができない、守秘義務があるなどの理由で、むずかしい側面もあります。

(1)土日は官公署が休日で業務をしていない

行政書士の副業がむずかしい点は、土日や祝日に官公署が開いていないことです。平日の昼間は会社員として働いているので、夜間や土日や祝日などを利用して、副業しようと考えると思いますが、許認可の書類作成や提出の仕事が多い行政書士にとって、官公署への提出ができないということになってしまいます。本業の行政書士に協力いただいて、書類作成に特化することも選択肢のひとつかもしれません。

行政書士の主要業務である、官庁向けの書類の作成や手続きの代行ができなくなってしまいます。ただし、年々、インターネットで申請から認可連絡まで、完結する手続きも増えています。今後は、副業がしやすい環境が整備される可能性はあると思います。

(2)副業では、仕事を完了できない

仕事の中には、急ぎでしなければならない案件とか、期限があって、手間のかかる仕事もあります。そのような場合に土日などの休日では、そもそも対応できない可能性があります。副業で行政書士をしているから、本業の仕事が忙しいので、少し遅れますとは言えません。

(3)守秘義務

行政書士限らず、どの士業でも守秘が義務となっています。政書士の場合は、行政書士法12条という法律によって守秘義務が定められています。行政書士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱った事項について、知り得た秘密などを漏らしてはならない。行政書士でなくなった後も、また同様とする。(行政書士法12条)

専業であって、本業が他にある場合、漏洩の可能性が行政書士を専業でやっている場合より多くなります。

2.副業行政書士の利点

会社に勤めながら副業行政書士をするのは、休みがなくなってしまうなどたいへんですが、利点もあります。

(1)行政書士を本業にするテスト期間にする

行政書士の副業をすることで、たとえば、行政書士を本業にするためのテスト期間や準備期間にすることができます。独立開業を目指している場合、お客さんの集まり具合などの検討を知ることができます。

副業として実務の経験をしておくことで、本業を始めたとしても、その際に余裕で仕事をすすめることができます。いきなり本業を始める場合、お客さんができるかどうか不安があると思います。

(2)リスクを少なくして行政書士をはじめる

いきなり事務所を借りて、什器備品を揃えて、行政書士の本業を独立開業するよりも、かなり低いリスクで仕事ができます。副業であれば、事務所を借りなくて、今使っているパソコンとインターネット回線と携帯電話があれば、とりあえず始めることができます。

行政書士は資格を取得して、登録さえすれば、独立開業できますが、事務所をつくったとしても、すぐに仕事が来るわけではありません。仕事が持続的に来るまでは、収入が減りますし、収入のない期間も覚悟しなくてはなりません。

本業があれば、収入が不安定であっても生活はできます。リスクを少なくして、行政書士として仕事をすることができます。これは、重要なことで、行政書士の試験に合格したり、公務員から行政書士になった方の中には、行政書士の看板さえ出せば、自然とお客さんが来る、お客さんを紹介してもらえると思ってらっしゃる方が多いですが、調理師免許を取得して、飲食店を開業する場合と似たようなもので、勝手にお客さんは来てくれません。

集客をしないとお客さんは集まりません。営業しないと、十分な収入を得ることはできません。

事務所はつくらなくてもよいですが、最低でもインターネットでホームページくらいはつくるべきです。今は、官公署の手続きで、疑問や困ったことができると、多くの人は、ネットでGoogleなどの検索をします。そこで、自分の名前がでれば、相談がくるというわけです。今は、職業別電話帳で、士業の名前を調べる人はほとんどいません。そもそも職業別電話帳もほとんど目にしません。

(3)副業行政書士の問題点

行政書士の仕事は、大きく分けて、手続代理業務、相談業務、書類作成業務になります。

平日の昼間の官公署などの提出などが、本業があるとむずかしい場合が多くなります。行政書士の仕事は官公署へ行くことが多くて、各種の書類提出などに何度もお役所に行くことになります。官公署は土日祝日、夜間などは開いていません。

本業が会社勤めであれば、平日の昼間は本業の仕事をしなければならず、副業がしづらくなってしまいます。もし、本業が、平日の休業日であれば、問題ないですが、平日の休業日の仕事は、一般ではあまりないので、それを探すのが、たいへんかもしれません。小売店業や観光業、飲食業などのサービス業であれば、平日が休業日の会社もあるかもしれません。

平日の昼間が本業しかできないのであれば、令和4年からインターネットでの一括申請が可能となった相続の業務や車庫証明の申請代行などを検討してみてもよいでしょう。

(4)本業の仕事がおろそかになる

行政書士の副業を行う問題点としては、副業が忙しくなると本業の仕事がおろそかになる場合があります。