特定行政書士とは行政書士法改正に伴って、特定の研修を受けることで、行政不服申立てに係る手続の代理を行うことができるようになった行政書士のことです。行政書士の職域を広げた職種となります。
平成26年に行政書士法が改正され、これまで官公署提出書類の作成や提出代行を主要な業務としてきた行政書士の職域に新たな分野が追加されました。
具体的には、行政庁の許認可などに関する「不服申立ての手続」です。特定行政書士とは「行政不服申し立て」の代理手続きができる者ということになります。
1.不服申し立て手続きとは
不服申立てとは、行政庁の処分その他の公権力の行使に当たる行為に関して、不服のある者が、行政機関に対して、不服を申し立てて、その違法性や不当性を審査させて、その是正や排除を請求する手続のことをいいます。
飲食店の営業の許可の申請を官公署に提出したとのに、不許可とされてしまった場合、行政署に対して、不許可処分の見直しを要求するといったものになります。
2.特定行政書士ができた経緯
不服申し立ては、以前では、弁護士のみができる仕事でした。従来では、不服申立ての手続きは、国民が行政機関に対して、紛争の解決を求める、法的な争訟手続的なものとして考えられていて、準司法手続であることから、行政書士から弁護士に依頼するのが普通でした。
引き続いて、行政書士に依頼したいという当事者の意見がありましたが、紛争、もめごとに近い案件なので、弁護士が担当すると考えられていました。
平成26年の法改正によって、「官公署に提出する書類に係る許認可などに関する審査請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続き」については、特定の研修を受けて試験に合格した行政書士に限って、取り扱うことができるようになったという経緯があります。
3.特定行政書士のできること
平成26年に行政書士法が改正された後、平成28年に行政不服審査法も改正されて施行されました。これに伴って、行政書士が行うことのできる行政不服審査法上の不服申立ての手続は、次の3つになりました。従来あった「異議申立て」手続きは審査請求に一本化されました。
審査請求、法に特別の規定がある場合の再調査の請求と再審査請求です。
(1)審査請求
行政庁の処分に不服がある者、あるいは、処分の申請をしたにもかかわらず行政庁が何らの処分もしないこと(不作為)について、不服がある者は、原則として、処分があったことを知った日の翌日から起算して3月以内に、当該処分を見直すように最上級行政庁、上級行政庁がない場合には処分庁、当該処分を行った行政庁に要求することができます。
(2)再調査の請求
審査請求とは別に、特に、法律で定められた場合に限って、上級行政庁ではなく、処分庁に対して、直接に処分の見直しをすることができます。これが、再調査の請求になります。再調査の請求などをせずに、直接、審査請求をすることもできます。
(3)再審査請求
審査請求をしても、棄却裁決、審査請求に理由がないこととされた場合の裁決がされた場合は、原則として、訴訟により処分の効力を争うことになります。これで、訴訟手続に移行するために、改正行政書士法によっても、このあとの訴訟は、弁護士に引き継ぐことになります。
法律に特別の定めがある場合は、裁決があったことを知った日の翌日から1ヶ月以内に再審査請求をすることができます。再審査請求は、特定行政書士が手続を行うことができるようになっています。
4.特定行政書士になる
都道府県単位で行われている研修に参加する必要があります。
研修は4日間の間に、行政不服審査法の解説・講座や、その実務について勉強することになります。
次に、特定行政書士として、認定されるための試験に合格する必要があります。
試験の受験の2ヶ月後に結果が発表されて、特定行政書士に認定されると、行政書士証標に「特定行政書士」が付記されます。行政書士票が金色になります。
特定行政書士とは、行政の許認可などに関する「不服申し立て手続き」を行える行政書士のこととなります。もともとは不服申し立てを行えるのは、弁護士の独占業務であり、行政書士の業務の領域ではありませんでした。不服申し立てを行いたい人が特定行政書士へ「許認可等の法的申請」「不服の申し立て手続き」を一貫して、依頼できるようになりました。