換価分割と代償分割ってなに?不動産相続の遺産分割方法について詳しく解説

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親族が亡くなり、マンションや一戸建てなどの不動産を相続することがあります。しかし、さまざまな手続きがあり、何から手をつけていいのかわからない方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、不動産相続に必要な基礎知識や不動産相続の基本的な流れ、不動産相続の遺産分割についてなどをそれぞれ詳しく解説します。

この記事で実際の不動産相続や遺産分割に役立つ内容となっているので、ぜひ参考にしてみてください。

不動産相続でまず初めにするべきこと

相続が発生したとき、最初に何から行えばよいのでしょうか?その手順から解説します。

死亡届

  • まずは、役所に死亡届を提出します。
  • 原則、死亡の事実を知ったときから7日以内に届け出なければなりません。
  • 死亡届は、死亡診断書又は検案書を添付する必要があります。
  • 死亡の事実は、戸籍及び住民票に記載されます。

一方、正当な理由なく届け出を怠った場合は、5万円以下の過料に処せられます。その他、死亡届の提出以外にも、公共料金の名義変更・解約、金融機関への連絡などの手続きも平行して行います。

遺言書の確認

遺言書が残されていた場合は、その内容が優先されるため、法定相続分にとらわれることなく被相続人の意思が尊重されることになります。

  • 遺言書には、自宅や法務局で保管している自筆証書遺言と公証役場で保管される公正証書遺言などがあります。
  • 自筆証書遺言は、机の引き出しやタンスの中に保管されている場合があります。
  • 公正証書遺言の場合は「公正証書遺言検索システム」で探すことができます。

遺言が見つかった場合は、遅滞なく家庭裁判所に提出して、検認を受けなければなりません。公正証書遺言の場合は、検認は不要です。(民法1004条1項、2項目)

また、封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができません。(民法1004条3項)

相続人の順序・相続財産の調査について

法定相続人のルール

民法では、あらかじめ誰が相続するかに関する規定があります。定められた相続人を法定相続人と言います。配偶者は常に相続人となります。配偶者以外は相続する順位が以下のように決められています。

相続順位配偶者相続人血族相続人法定相続分
第1順位配偶者:1/2直系卑属(子・孫)子:1/2
第2順位配偶者:2/3直系尊属(父母・祖父母)直系尊属:1/3
第3順位配偶者:3/4兄弟姉妹兄弟姉妹:1/4

被相続人の死亡よりも先に、本来は相続人となる被相続人の子や兄弟姉妹が亡くなっていた場合等は、その者の子が代わって相続することになります(代襲相続)。例えば、亡くなった方のお孫さんや甥子さんになります。

法定相続人が確定すると、相続財産の調査を行います。

相続財産は、プラスものだけでなく、マイナスの住宅ローン、カードローンなども含みます。

相続放棄について

マイナスが多い場合など、相続放棄をすることが予想されます。

  • 相続放棄は、相続開始を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に手続を行わなければなりません。
  • 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で手続きを行います。
  • 相続放棄の必要書類は、相続放棄申述書・相続放棄にする人の戸籍記載事項証明書(戸籍謄本)・被相続人の戸籍記載事項証明書などです。

3ヶ月間は、財産調査を行い相続放棄するかどうかの熟慮期間となります。

この熟慮期間内に相続放棄をするかどうかの判断ができない場合は、家庭裁判所に対し期間の伸長を申し立てることができます。

不動産の調査について

不動産を相続する場合は、土地と建物それぞれを調べる必要があります。

固定資産税・都市計画税課税明細書があるか、土地建物の売買契約書、登記事項全部証明書、登記済証、登記識別情報などが保管されていないか合わせて確認します。

被相続人が不動産を複数所有していて、すべてを把握できていないケースなどは、市区町村役場で「名寄せ帳」の写しを取得します。

「名寄帳」とは 、 課税対象の固定資産を所有者ごとにまとめたものです。名寄帳には、未登記建物や非課税の不動産も記載されています。

  • 「地番」や「家屋番号」で特定することができれば、法務局で登記事項証明書を取得します。
  • 相続税の計算する際には、都市計画図・地積測量図・路線価図などが必要にある場合もあります。
  • また、被相続人の財産の中に不動産があれば、相続登記をしなければなりません。

不動産相続の遺産分割について

遺言書がなければ、法定相続の割合で遺産分割を行うことができますが、誰かどれだけ相続するかを相続人全員で話し合う「遺産分割協議」で決定することもできます。

遺産分割協議では、自己の権利ばかりを主張する人や積極的に話し合いに参加しないケースもあり、スムーズに進まないこともあります。

とはいえ、相続財産については、現金であれば分割して相続することのはそれほど複雑ではありません。

一方、不動産を単独で相続する場合は分割の必要がないため、手続きは複雑ではありせん。

しかし、不動産となると現金のように簡単に真っ二つにして分割することができないので、さまざまな方法を検討する必要があります。

不動産の相続で必要な書類の準備

相続の手続きでは、さまざまな書類を準備する必要があります。

(1)被相続人の戸籍謄本

出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本が必要です。

(2)被相続人の住民票の除票

住民票の除票は死亡届により、抹消された住民票ことです。

(3)相続人全員の戸籍謄本

被相続人が亡くなった日付以降のものが必要です。

(4)遺言書

自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所の検認が必要です。

(5)遺産分割協議書

相続税の申告する際や相続登記をする場合などに必要です。作成すると、相続人すべてが署名捺印しなければなりません。相続人一人だけの場合は、遺産分割協議書は不要です。

(6)相続人全員の印鑑証明書

遺産分割協議書に押印する実印が必要です。

(7)登記事項証明書

法務局で取得します。

(8)不動産相続人の住民票

相続登記は、各相続人の住民票が必要です。不動産登記簿は所有者の住所や氏名の記載されるので、相続人の住民票が必要となります。

(9)不動産の固定資産評価証明書

相続登記を申請する際に登録免許税を計算するために必要となります。

不動産相続の遺産分割方法

相続財産の中には預金や有価証券だけでなく、土地や家などの不動産があります。ここでは、不動産を相続する際の遺産分割方法について解説します。

現物分割

現物分割は物理的にそのまま分割を行うことです。土地の場合は、分筆して各相続人が取得することとなります。

例えば、1人が土地、1人が建物というように各相続人で現物分割します。遺産の種類が多いケースなどで利用されます。

現物分割のメリットとしては、権利関係が明確で相続手続の手間がかからないこと、不動産を残せる、評価の問題でトラブルが起きにくいなどがあります。

しかし、不動産の価値はそれぞれ異なるので公平な分配方法ではない場合もあり、他の相続人が納得しない可能性もあります。

土地の分筆は測量や登記等の費用や手間がかかり、他の相続人から不満の声が出るケースも考えられます。

代償分割・代物分割

代償分割は特定の相続人が現物で取得し、他の相続人には代償金を提供する方法です。つまり、不動産を取得する相続人が不動産を取得しない相続人に金銭を支払うということです。

特定の相続人に相続させる必要がある場合や現物分割が難しいケースなどに行われます。

代償分割のメリットとしては、相続人間で不平等とならない、処分することなく現物のまま残せる、所得税・相続税の節税につながるなどがあります。

一方、代償分割は、相続分に相当する十分な資金が必要です。また、不動産の評価に納得がいかない場合は、不動産鑑定士の評価が必要となります。

売却すると譲渡所得税がかかりますが、現物を残すことで譲渡所得税がかかりません。また、土地の相続では「小規模宅地等の特例」を活用することができます。

換価分割

換価分割は相続した不動産を売却(換価)して、その現金を各相続人で分割する方法です。一般的に法定相続分に応じて分割します。

 換価分割のメリットとしては、現金に換えて1円単位で分割することができます。これにより、公平に分け合うことができます。また、代償分割とは違い、資金がなくても分割可能になります。

さらに、現金より不動産の方が相続税評価額が下がるため、不動産を売却する方が相続税の節税対策になるケースもあります。

ただし、不動産を売却すると不動産会社に支払う仲介手数料や測量費用などがかかるケースもあるので、受け取る金額が低くなる可能性があります。

共有分割

不動産を法定相続分により、共有名義で相続する方法です。つまり、複数の人で不動産を共同所有している状態を指します。

メリットは、法定相続分で分割するので手続きの手間がかからないということです。

しかし、一人ひとりの共有持分権の範囲は限られています。たとえば、物件を維持するための保存行為として、共有物の修理や不法占拠者への明け渡し請求などがあります。

一方、管理行為は、共有持分の過半数の同意がなければなりません。たとえば、共有物の賃貸や賃貸借契約の解除などです。

また、処分行為は各共有者全員の同意が必要です。処分行為は、売却や大規模なリフォーム、取り壊しなどです。

このように不動産の共有分割では、全員の同意が必要になることもあるのでトラブルが起こる可能性があります。そのため、共有分割は最後の手段としてとるべき方法と考えられます。

土地のみを相続

土地のみの相続方法は、分筆も可能であるため現物分割をはじめ、代償分割、換価分割、共有分割いずれの方法も行うことができます。

土地の相続税評価額は「路線価方式」もしくは「倍率方式」で求められます。

土地の相続は、名義変更(相続登記)の手続きを行います。期間制限はありませんが、亡くなった方の名義のままにしておくと、売却や借金の担保にすることができないので注意しましょう。

また、土地を相続した翌年からは、固定資産税・都市計画税がかかります。一方、土地の相続では、一定の条件を満たす親族であれば「小規模宅地等の特例」を活用することができます。

「小規模宅地等の特例」について

「小規模宅地等の特例」とは、被相続人が住んでいた土地を相続した場合に、宅地の相続税評価額が最大80%減額することができる制度です。居住用の宅地は、330㎡まで80%減額されます。

「小規模宅地等の特例の計算例

相続財産は3,600万円以下であれば、相続税が非課税となります。

土地の評価額1億円 ー 特例の80% =2,000万円(適用後)

2,000万円(適用後) ー 基礎控除3,600万円 =0万円

結果的に相続税がかからないことになります。

土地の相続で注意する点は、土地価格は常に変動するため値上がりした際に他の相続人から不満が出る可能性があります。

戸建て物件の相続

戸建ての相続でも宅地に「小規模宅地の特例」を利用することができます。しかし空き家になっている場合、「特定空き家」に指定されると「小規模宅地の特例」の対象外となるので注意が必要です。不動産相続は、何から始めるのか手順をしっかり理解する必要があります。

また、戸建を売却する際は、土地の測量をしなければなりません。このときに隣地境界線をめぐるトラブルがあると、境界の明示がないことがあり、土地の売却価格が下落する可能性があります。

マンションの相続

マンションの相続は、賃貸して家賃収入を得られるメリットがあります。しかし、立地条件がよくない場合や築年数が古いなど、さまざまな条件によって借り手がつかないリスクも生じます。

安定した賃貸経営を目指すためには、リフォームやリノベーションを必要とする場合もあります。賃貸経営は専門知識が必要になるため、不動産会社に相談することもひとつの方法です。

まとめ

今回は、不動産相続に必要な基礎知識や不動産相続の基本的な流れ、不動産相続の遺産分割についてなどをそれぞれ詳しく解説しました。不動産相続は、手順をしっかり理解した上で、全体的な流れを押さえておくことが大切です。

遺産分割方法については、現物分割・代償(代物)分割・換価分割・共有分割に分けられます。それぞれのメリット・デメリットを比較しながら、慎重に進めていきましょう。

また、土地相続、マンションの相続、戸建ての相続など、個別の不動産相続について注意点を確認しておきましょう。

不動産の相続は、さまざまなトラブルが起こる可能性があり、わからないことがあれば法律の専門家である弁護士や司法書士に相談することも大切です。

この記事のディレクター
行政書士 保田 多佳之

このサイトの管理者。2005年から現在までウェブの企画・制作・マーケティングまで幅広く経験しています。これからも仕事の中心はウェブの仕事です。2021年から行政書士専用のウェブ制作を行っています。

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