行政書士と宅地建物取引士、不動産が関わる業務ならば親和性があるのでダブルライセンスもオススメ

1.宅地建物取引士とは

宅地建物取引士とは、宅地建物取引業法に基づいて定められている国家資格者になります。宅地建物取引業者、一般には不動産会社が行う宅地または建物の売買、交換または貸借の取引に対して、購入者などの利益の保護、および円滑な宅地、または建物の流通に資するように、公正かつ誠実に法に定める事務を行う、不動産取引の専門家です。具体的には、重要事項の説明などがこれにあたります。

2.行政書士と宅建士の同時取得

行政書士と宅建士の同時取得を目指している人も多く、同じような時期に受験する人もいます。

同じ年にまとめて受けて、合格すればよいですが、そのために学習のスケジュールをたてるうえで、効率的、効果的であるどうかは、検討する必要があります。

3.行政書士と宅建士の試験の特徴

行政書士と宅建士はどちらも法律関係の資格試験になります。試験科目で、それぞれどの法律の領域であるかがわかります。

(1)行政書士

「行政書士の業務に関し必要な法令等」

憲法、行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法、地方自治法、民法、基礎法学

「行政書士の業務に関連する一般知識等」

政治、経済、社会、情報通信、個人情報、文章理解

(2)宅建士

民法(権利関係)、借地借家法、不動産登記法、区分所有法、国土利用計画法、都市計画法、建築基準法、土地区画整理法、農地法、宅地造成等規制法、税法、地価公示法、住宅金融支援機構法、公正競争規約、宅建業法

行政書士と宅建士で重複している科目は、民法だけで、行政書士は、行政法と民法が中心になっており、宅建士は、建築や不動産関連の法律が中心になっています。

借地借家法などは民法が基礎となっているために、行政書士試験でも関連する問題があります。行政書士試験では、必ず借地借家法や都市計画法などの不動産分野が出るわけでもありません。

試験科目を比較した場合は、行政書士と宅建士の場合では、効率的とはならないようです。

(3)行政書士と宅建士のスケジュール

行政書士試験が実施されるのは、11月の第2日曜日になります。宅建士の試験日は10月の第3日曜日。両者の間には1ヶ月ほどの間隔しかありません。

宅建士を受けたあとに3週間後の行政書士試験に向けて、準備をはじめなければなりません。

(4) 行政書士と宅建士の合格率

行政書士試験は約10%で、宅建士試験は約15%となります。平均するとこれくらいの数字になります。

両方を同時期に受験する人は、すでに法律系の資格や不動産系の資格の試験に合格している人であれば、合格した時の知識をいかして、受験すると有利かもしれません。

4.行政書士と宅建士の資格を同時に持つことの意義

行政書士と宅建士の資格を両方とも持つことの意義はあります。それぞれの特徴とメリットがあって、両方の資格を取得することで就職や転職、独立開業に有利となることもあります。

宅建士のほうが行政書士より合格しやすいので、まず、宅建士を取ってから、行政書士を目指して、計画するのが一般的です。試験範囲や出題科目は違うので、別々に対策と計画を立てて、勉強するとよいでしょう。

5.行政書士と宅建士の勉強

(1)行政書士

試験の出題は、法令等科目と一般知識等の2科目で、法令等科目の中には、民法と行政法からの出題が多く出されます。

商法や憲法、一般知識はまったく出ないというわけではありません。配点が多い民法と行政法を中心に勉強して、その他もまんべんなく勉強するようにします。

40文字で解答する記述の問題もあります。記述式の対策や過去問の対策もしておけば、合格も夢ではありません。

(2)宅建士

全50問をマークシート方式で回答する選択式の問題になっています。過去問を暗記して、覚えるだけでは、なかなか点が取れません。過去問の場合は、なぜ?ということを理解しなければなりません。

民法の権利関係や、借地借家法、区分所有法なども、条文の深い意味を説明できなければ、正確とならないようになっています。過去問や法律の条文も、丸暗記ではなくて、根本的な理解をするようにします。

(3)開業

行政書士は、独立開業に向いています。行政書士はどちらかと言えば、独立開業に向いている資格になります。行政書士は、1万以上の官公署関係の書類を扱える書類作成の士業です。集客力や経営の仕方次第で、資格を取得して、独立開業することもできます。

法務事務所、法律事務所や行政書士法人などは、スタッフとして行政書士を募集しているところもありますが、それほど多くありません。

(4)就職

宅建士は、どちらかと言えば、開業より不動産業界への就職や転職に向いています。

宅建士を取得すれば、宅建の業界での就職や転職ができます。宅建業法では、宅建業を営む事務所は、宅建士を配置しなければならないと定められていて、不動産の権利関係に詳しい人材は業界で求められています。

宅建業界や不動産業界での就職や転職を希望する場合には、宅建士の資格があると有利になります。

6.行政書士と宅建士のダブルライセンスについて

行政書士の仕事は大きく分けて、「書類作成」「許可申請」「相談」の3つとなっています。どの業務をメインにするとしても、独立して開業するケースが多くなっています。

それぞれの仕事内容ですが、次のとおりとなります。

・書類作成

会社の設立や建設作業などをする時に、国や地方の官公署に書類提出が必要になっていて、その書類作成の代行を行います。

遺言書や示談書などの個人的な書類に関しても、取り扱うことができます。

・許可申請

書類を作成後に、クライアントに代わって、国や地方への提出の代行もします。

・相談

相談については、書類作成を行う時に、クライアントと話し合うのはもちろんですが、コンサルタント業務としての業務もしています。

最近は、コンサルタント業務をメインとして、営業している行政書士もいます。

宅建士も行政書士と同じく国家資格で、宅建士は、宅地建物取引士の略称となります。

不動産の売買などを行う時に、専門的な説明をお客さんにすることができて、不動産業界では、ほぼかならずいる資格となっています。

不動産取引をしている会社であれば、従業員の20%以上に宅建士を配置する義務が設けられていて、不動産業では欠かせない資格となっています。

行政書士とは違って、独立開業する人は相対的に少なく、企業に就職して働く場合が多くなっています。

宅建士と行政書士の両方を取得するメリットですが、両方とも試験で合格するには、かなりの労力と時間が必要になりますが、それだけの価値はありそうだと言えそうです。

行政書士の仕事では、書類作成がメインになっていますが、扱う書類は1万種類以上だと言われています。その中には、不動産関係の書類も多くあって、不動産相続のケースでは、両方の資格を取得していればすむーずに仕事をすることができます。農地関係も行政書士の仕事でメインとなりますが、農地の売買ということになれば、両方のライセンスを持っていると有利になります。

行政書士でコンサルタントの仕事をしていく場合、不動産関係に関連する相談も多くあるので、両方の資格を持っていると詳しい説明ができます。

行政書士は、後独立開業することが多くなっていますが、独立開業してコンサルタント業務などが必ずしもうまくいくとは限りません。宅建士の資格があれば、宅建士の資格で、不動産業界に就職することもできます。

行政書士と宅建士を兼業することも可能になります。行政書士をメインにして、不動産業をするのではなく、行政書士と宅建士の両方を兼業することもできます。兼業することで仕事の幅は大きく広がります。