行政書士の独占業務は、行政書士法によって行政書士に認められている業務のことを指します。
行政書士は、個人や法人の代理人として、様々な行政手続きを行います。これには、建築許可、営業許可などの許認可申請その他の届出などが含まれています。
行政書士の仕事は多岐にわたりますが、行政機関へ提出する書類や法的書類の作成をする専門家が行政書士ということになります。
行政書士の独占業務には、官公署に提出する書類の作成、権利義務に関する書類の作成、事実証明に関する書類の作成の3種類あります。
行政書士の独占業務に関しては、行政書士法において、次の規定があります。
1.行政書士法
第一条において、行政書士の業務を規定しています。
「第一条の二」
行政書士は、他人の依頼を受けて、報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他、人の知覚によっては、認識することができない方式で作られる記録であり、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下、同じ)を作成する場合において当該電磁的記録を含む。以下この条、および次条において同じ。)その他、権利義務または、事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む)を作成することを業とする。
第19条第1項本文においては、業務が原則として、行政書士のみが行える業務であると規定されています。
「第十九条」
行政書士、または行政書士法人でない者は、業として、第一条の二に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合、および定型的かつ容易に行えるものとして、総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験、または、能力を有する者として、総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。
行政書士によって、作成される書類の種類は膨大な数があって、官公署への提出の書類だけでも多くの種類があります。
ある特定の役所だけに書類を提出する他の仕業と違って、行政書士は、いろいろな官公署などに提出する書類を作成することができるようになっています。
ただし、重要なことは、第19条第1項のただし書によって、他の法律で別段の定めがある場合には、共同法定業務となります。
つまり、行政書士は、他の士業の独占業務以外のもの全てができる資格ということになります。
2.官公署に提出する書類の作成
行政機関に提出する許認可申請書類や届出書を作成する業務になります。許認可申請の種類としては、1万種以上あるとされています。
行政書士の業務として、代表的なものは、次のとおりとなります。
(1)不動産関係
①建設業許可申請
②宅地建物取引業免許許可申請
③農地転用許可申請
(2)営業許可関係
①飲食店営業許可申請
②酒類販売業免許申請
③旅館営業許可申請
(3)法人設立関係
①NPO法人設立認証申請
②医療法人設立許可申請
③宗教法人設立認証申請
許認可申請は、許認可の種類によって、許認可が認められるための要件はいろいろあって、簡単に申請がおりる許可もあれば、簡単には許可がおりなくて、数年もかかる場合があります。
3.権利義務に関する書類の作成
権利を発生させたり、変更、存続、消滅の効果を発生させるための意思表示を内容とした権利義務に関する書類の作成も行政書士の業務となります。
(1)相続関係
①遺産分割協議書
②相続分譲渡証書
③特別受益証明書
(2)契約書関係
①売買契約書
②賃貸借契約書
③贈与証書
4.行政手続き関係
①請願書
②行政不服申立書(特定行政書士に限っている)
③上申書
権利義務に関係する書類は、意思表示の内容については、確証として残す目的で、文書を作成します。
③事実証明に関する書類の作成
事実証明に関する書類も行政書士の業務となります。
会社など一般の企業から作成の依頼を受けることも多くあります。
5.会社関係
①定款
②株主総会議事録
③取締役会議事録
6.会計書類
①会計帳簿
②決算書類
7.調査書類
①現地案内図
②交通事故調査書
③現況測量図
行政書士法第19条第1項ただし書によれば、上記の①~③の中には、他の士業でも行える業務が含まれています。
行政書士法によって定められた業務とは、官公署などに提出する書類、および事実証明、権利義務に関する書類の作成代理ということになります。
事実証明の書類とは、たとえば契約書や遺言書、内容証明などが挙げられます。
業務の独占を認める法的な根拠としては、行政書士法「業務第1条の2、第1条の3」で規定されています。
第1条の2、行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類、その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とする。
書類の作成であっても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができません。
行政書士が作成できる契約、その他に関する書類を代理人として作成できて、書類の作成について、行政書士は相談に応じることができます。
膨大な数の書類の作成業務をできるとされている行政書士ですが、上記の法律の条文にもありますが、他の法律によって制限されている分野や他の士業などに独占されている分野に関しては、代理できません。
たとえば、税理士法によって税理士の独占的な業務と認められている税務書類の作成、司法書士法によって司法書士の専門とされている登記書類の作成、社会保険労務士法によって専門分野とされている社会保険や労働関係の書類作成などは、行政書士はできません。
これらの他士業の分野を除いたとしても、行政書士が扱える書類の数は膨大な数となります。
8.第十九条
「行政書士または、行政書士法人でない者は、業として第1条の2に規定する業務を行うことができない。
ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。
総務大臣は、前項に規定する総務省令を定める時は、あらかじめ、当該手続に係る法令を所管する国務大臣の意見を聴くものとする」
行政書士または、行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができません。
ただし、他の法律に別段の定めがある場合、および、定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関して、相当の経験、または能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合はこの限りでありません。
「官公署に提出する書類」「権利義務に関する書類」「事実証明に関する書類」の作成については、事業者以外は、原則として、行政書士にしかできない業務とされています。
独占業務のある国家資格には、弁護士・弁理会計士・税理士・司法書士・医師・歯科医師などがあります。
行政書士の独占業務の主な3つ
(1)「官公署に提出する書類」の作成
(2)「権利義務に関する書類」の作成
(3)「事実証明に関する書類」の作成
行政書士の独占業務としては、これらの3つの書類がありますが、書類作成のすべてが独占業務というわけではなくて、その中には行政書士以外にも作成できる書類があります。
行政書士は官公署向けの書類の作成の全てをできるわけではありません。
行政書士法第1条2項2号では「他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。」と規定されており、扱うことができない業務もあるので注意が必要です。
「官公署に提出する書類」「権利義務に関する書類」「事実証明に関する書類」の中には、他の法律によって、制限されているものが含まれているために、書類作成の全てが、行政書士の独占の業務とはなっていません。
9.「官公署に提出する書類」の作成
「官公署に提出する書類」の作成の多くは行政書士の業務となります。
行政署などに対して提出する許認可申請書類や届出書を作成する業務となります。
飲食店営業許可申請書
酒類販売業免許申請
建設業許可申請書
旅館営業許可申請書
農地転用許可申請書
宅地建物取引業免許許可申請書
道路使用許可申請書
風俗営業許可申請書
NPO法人許可申請書
宗教法人設立認証申請書
個人タクシー免許申請書
建築確認申請書
旅行業登録申請書
医療法人設立許可申請書
入札資格審査申請書
在留資格申請書
自動車登録申請書
車庫証明書
営業許可や販売許可の申請書の作成を事業者に代行して実施する業務になります。
これらの許可申請は簡単に申請が下りる場合もあれば、審査がむずかしく、数年かかってしまう場合もあります。
許可申請書の内容は、煩雑で難しいので、当事者が個人で申請することはあまりありません。多くの事業者などは、行政書士に依頼をしています。
10.コンサルタントとしての行政書士
許認可申請が下りて、事業を始めることができますので、行政書士は許認可を受けられるかどうかを判断することができるという意味において、コンサルタントをしているとも言えます。
11.権利義務に関する書類の作成
権利義務に関係する書類とは、権利の発生や変更、存続、消滅の効果の意思表示を内容とした契約書や文書のことになります。
権利義務に関する書類には以下のような書類があります。
売買・賃貸借・抵当権設定・請負、雇用・身元保証、示談などの契約書
契約申込書、請求書(内容証明郵便による)、就業規則などの約款
遺産分割協議書や建築工事紛争予防協議書など複数者間の協議書
法人・団体の議事録および会議資料
会社・法人設立の必要書類(発起人会・創立総会・株主総会議事録・取締役会議事録・定款・株式申込書など)
特別受益証明書
贈与証書
請願書
行政不服申立書
上申書
これらは、証拠残すという意味で確証となる書類として行政書士が作成できます。法的に有効な契約書や協議書などを作成します。
12.「事実証明に関する書類」の作成
事実証明に関連する書類としては、交渉がある事象を証明するための文書のことになります。
第三者の行政書士が入ることで公正な事実証書として記録することができます。
次の書類などが該当します。
・資格証明
・社員履歴調書
・会社業歴書
・自動車登録事項証明書
・交通事故調査報告書
・会計帳簿
・決算書類
・現地案内図
・現況測量図
事実証明に関するこれらの書類は、行政書士に依頼する場合があります。