行政書士の都市と地方での仕事の違い、都会は専門家でも田舎ではなんでも

行政書士は、都市部では、得意分野などの業務特化型でも成り立ちますが、地方では、専門分の仕事だけでは、お客さんの数もしれているので、成り立たない可能性があります。地方では、やれる仕事はなんでもやる必要があります。

1.行政書士の仕事の分野

行政書士の分野は、司法書士、社会保険労務士などの他の士業に比べて、たいへん仕事の分野が広くなっております。行政書士の仕事は名前に行政とあるように、行政全般の書類作成となります。

ただし、他の士業の専門分野の仕事はできないことになっています。たとえば、もめごとは、基本的に弁護士となり、登記は司法書士が専門など、行政書士の仕事の範囲は広いもののできない仕事もあります。

(1)仕事の内容からの分類

・許認可申請関係、行政書士のメインとなる仕事です。官公署(自治体、各省庁、警察署など)の許可や認可の仕事になります。

・各種書類の作成や相談、権利や義務に関わる書類の作成や相談の仕事です。

・会社経営のコンサルタント、中小企業などのビジネスをサポートします。

(2)具体的な仕事内容

・飲食店営業許可申請(保健所)、宅地建物取引業免許許可申請(都道府県知事、または国土交通大臣)、NPO法人設立認証申請(都道府県知事)

・外国人雇用関係、在留資格認定証明書交付申請、在留期間更新許可申請、在留資格変更許可申請

・法人関連手続き、定款の作成や認証手続き、議事録などの作成、助成金や補助金申請、公的融資の申請、法人設立関係

・中小企業支援、契約書や社内規程作成、経営革新計画や事業再生計画作成、資金調達(融資申し込み、補助金申請)

・知的資産・知的財産、知的財産権の保護や利用、著作権登録申請、ライセンス契約

・運輸関係、許可申請や届け出、自動車運送事業許可申請、自動車保管場所証明申請(車庫証明)、交通事故の保険金請求(自賠責保険)

・遺言や相続関係、遺言書、遺産分割協議書の作成、相続分譲渡証書の作成

・農地関係、農地転用の許可申請、農業委員会関係

・国籍取得、日本国籍の取得、帰化申請

2.都会と地方の違い

行政書士の仕事の分野のなかで、地方では都会に比べて、圧倒的に企業の数が少なくなりますので、たとえば、飲食店営業許可申請関係、法人関連手続き関係、中小企業支援関係、知的資産・知的財産関係、運輸関係が地方では少なくなってしまいます。

一方で、地方では農家が多いことから、農地転用の許可申請などの農地関係の仕事が多くなります。農地転用は、農地を農地以外の目的に転用することです。農地法により規制されています。

行政書士には、地方で多いと推測される在留資格関係、外国人関係の手続きの仕事があります。都市部と地方での外国人関係の仕事を調べてみるために、外国人関係については、令和4年10月の出入国在留管理庁の統計を分析してみました。

「令和4年6月末現在における在留外国人数について」を次のとおり都市部と地方部に「都道府県別在留外国人数」をわけてみました。都会と地方の数を比較してみました。

日本全国の総数:2,961,969人

都市部:1,913,365人

東京都  566,525人
神奈川県 237,450人
埼玉県  205,824人
千葉県  176,790人
愛知県  280,912人
京都府   63,674人
大阪府  262,681人
兵庫県  119,509人

その他:1,048,604人

静岡県,福岡県,茨城県,群馬県,岐阜県,三重県,広島県,栃木県,北海道,長野県,滋賀県,岡山県,宮城県,沖縄県,富山県,熊本県,山梨県,新潟県,福井県,山口県,石川県,福島県,奈良県,大分県,香川県,愛媛県,鹿児島県,長崎県,島根県,宮崎県,岩手県,山形県,和歌山県,佐賀県,徳島県,青森県,高知県,鳥取県,秋田県で、100万人いることになります。上記の都市部に比べると対人口比では、地方の方がかなり多くなります。

これらの統計結果から地方での行政書士の仕事としては、農地関連、外国人関係の仕事が、都会と比べると多くなっていると思われます。

それでは、次に行政書士の数も調べてみました。

行政書士の個人登録者数(令和2年)

都市部: 21,868人

(都市部の内訳)
東京都  7,055人
神奈川県 3,066人
埼玉県  2,482人
愛知県  3,099人
京都府   897人
大阪府  3,394人
兵庫県  1,875人

上記以外の地方の人数です。

その他: 27,573人

対人口比ということであれば、都市部も地方も3%~5%とあまりかわりませんが、地方にも多くの行政書士の登録者がいることに間違いはありません。

都市部では、法人関係の仕事が多いことを考えると、地方では、農地関係が多くて、外国人関係も少し多いということを考え合わせても、地方での行政書士の仕事は集客という点においては、激戦であろうと予想されます。

ただし、地方では、農業との兼業の人が多いことを考え合わせると、行政書士も兼業の人が多いことも推測されます。

3.まとめ

いずれにしても、都市部よりも地方のほうが、仕事の確保はむずかしく、集客には労力が必要だと思われます。

都市部では、車庫証明、建設の許認可など、それだけでもやっていけますが、地方においては、農地関係だけというわけにはいきません。

地方においては、幸いなことに、行政書士の仕事は幅広くバリエーションがありますので、得意な分野だけでなく、いろいろ取り扱えるようにしておかなければならないと思います。

その意味では、法令のアップデートや各申請などは、手続きが煩雑な面もあるので、たいへんな面が多いかもしれません。

また、地方は、人口が分散していますので、都市部以上にインターネットでの集客が重要になってきます。それほどリッチなコンテンツにしなくても、少なくとも「地域名+行政書士」で、自分の事務所の名前くらいは出てくるようにしておきたいものです。