協議会と銀行のリバースモーゲージの比較と相続時の活用法

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相続した財産を活用する方法として「リバースモーゲージ」が利用されることがあります。では、「リバースモーゲージ」とは、どのような制度で、その利用にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。今回は、この「リバースモーゲージ」について、相続との関係で解説していきます。

リバースモーゲージとは

リバースモーゲージ(reverse mortgage)とは、自宅を担保に資金の借入れを行い、借入人死亡時に担保不動産を処分し、この処分価格から借入金の返済を行う貸付手法のことを言います。リバースモーゲージの利用目的としては、老後資金の確保のためというものが多く、利用者の多くは高齢者となっています。

リバースモーゲージの分類

リバースモーゲージは、実施主体によって、大きく分けて、二種類に分類することができます。

社会福祉協議会が取り扱うもの

民間の金融機関が取り扱うもの

分類に応じたメリット・デメリットはありますが、どちらの場合も、自宅を生存中に手放すことなく、資金を借り入れることが可能となる制度です。

各都道府県の社会福祉協議会が取り扱うもの

国の「不動産担保型生活資金」に基づく低所得者を対象としたものです。

不動産担保型生活資金とは、各自治体の社会福祉協議会が、高齢者世帯を対象とし、所有不動産を担保に生活資金を融資する制度です。

メリット

自治体ごとの社会福祉協議会が実施しているため、全国、どの地域でも利用可能です。

デメリット

高齢者の自立支援が目的のため、条件が厳格であるため利用できる場合が限られています。

低所得要件があるほか、利用年齢は65歳以上、親以外の同居人がいないことが条件となっており、担保とできる不動産にも条件があります。

民間の金融機関が取り扱うもの

金融機関によって内容が異なります。

例えば、生活資金のほかに住宅の建て替えや趣味・レジャーのために使うことも可能ですし、制度を使える年齢も60歳以上や55歳以上となっている場合が多くあります。また、低所得要件はなく、むしろ年金などを含めた一定額以上の年収が要求されます。

メリット

社会福祉協議会が扱うものと異なり、金融機関が融資として行うものですから、利用条件や資金用途は比較的緩やか

デメリット

金融機関の多くは、担保不動産の所在地を首都圏やその金融機関本店所在地の都道府県のみに限定しており、利用可能地域が限られている

リバースモーゲージの利用理由

リバースモーゲージの利用理由には様々なものがあります。

代表的なものとしては、老後の生活資金や医療介護費用の確保のため、住宅の買い替えやリフォームのため、住宅ローンの支払いのため、趣味やレジャーのためといったものが挙げられます。また、後に説明するように、後の相続時の遺産分割を容易にするためにリバースモーゲージを利用することも可能です。

リバースモーゲージ利用のメリット

生前自宅を手放さずに済む

リバースモーゲージでは、不動産は担保となっているだけですので、借入金返済のための処分を行うまでは、不動産の所有権は借入人にあります。したがって、リバースモーゲージでは、借入人の生存中は不動産を手放す必要はありません。つまり、老後に自宅や土地といった不動産しか資産がない場合にも、不動産を手放さずに、自宅に住み続けながら資金を手に入れることができます。

 遺産分割が容易

リバースモーゲージは、いわば、不動産を死亡により売却処分され失うことが予定される不動産を、生前に前倒しで借入金という形で現金化するものです。死亡により相続があった場合、不動産の状態であれば、複数人の相続人がいれば、それぞれの不動産の利用・処分についての意向が合わず、遺産分割が困難となる場合がしばしばあります。他方、リバースモーゲージにより現金化しておけば、金銭という複数人での分割が容易な形となっているため、相続時の遺産分割が容易になります。

リバースモーゲージのデメリット

利用条件が限られる

各都道府県の社会福祉協議会

様々な要件を満たす必要がある

民間の金融機関

利用できる地域が限られている

先に説明したように、いずれのリバースモーゲージを利用する場合でも、利用条件が限られているのは、デメリットのひとつといえます。

融資後のリスク

リバースモーゲージには、融資後に以下の3つのリスクがあると言われています。これら3つのリスクを負担しなくてはならないことは、リバースモーゲージのデメリットです。

リバースモーゲージのデメリット
  • 想定以上の長生きによるリスク
  • 金利変動に伴うリスク
  • 不動産価値下落のリスク

想定以上の長生きによるリスク

リバースモーゲージの借入期間は一般的に借入人の死亡時までの期間とされているため、想定した以上に長生きすると、借入金額が増加し、最初に設定された融資限度額に達してそれ以上借りられなくなるリスクがあります。また、想定以上に長生きすればするほど、借入金が尽きてしまうリスクもあります。

金利変動に伴うリスク

民間の金融機関が行うリバースモーゲージの多くは変動金利とされています。したがって、借入後に金利変動があり、金利が上昇すると、これに伴い、支払うべき利息が増加するというリスクを負うことになります。

不動産価値下落のリスク

生存中に不動産価値が下落した場合、融資限度額の見直しがされることがあります。つまり、不動産価値下落により、担保割れとなった場合、担保評価額を超えた融資額の返済を要求される場合もありますし、融資限度額が当初の想定より低い金額に変更されることもあるのです。

推定相続人の同意の必要性

リバースモーゲージは、被相続人(借入人)の死亡を条件として、担保不動産を処分し、借入金の返済に充てるものです。したがって、相続人は、不動産そのものを相続することはできません。そのため、契約時に相続人となることが予想される人(推定相続人)から、不動産を相続できないことについての同意を得ておくことが必要です。

被相続人の死亡により担保不動産が売却処分された場合でも、売却代金から借入金を返済し終えることができない場合もあります。この場合、残債務を相続人が承継する契約(リコース型)と、残債務を相続人が承継しない契約(ノンリコース型)があり、いずれの契約条件のリバースモーゲージなのかを相続人に説明しておく必要があります。

また、配偶者がいる場合に、配偶者が契約を引き継ぐことで引き続き自宅に住み続けることができるとする契約内容としている金融機関も多くありますが、そうでない場合もあります。この点についても、契約条件を確認した上で、配偶者に説明し、同意を得ることが必要となります。

このように、リバースモーゲージの複雑な契約内容を確認し、推定相続人に説明した上で同意を得なければならない煩雑さがあるというのは、リバースモーゲージのデメリットのひとつといえます。

リバースモーゲージの利用方法

これらのメリット・デメリットを踏まえて、リバースモーゲージを利用したいと考えた場合、まず、「なぜリバースモーゲージを利用したいのか」という理由を明確にしておく必要があります。

この理由によって、2種類のうちどちらを利用するかを決める要素となるうえ、民間の金融機関が取り扱うものを利用する場合、利用目的に応じたリバースモーゲージを取り扱う金融機関を選択することが可能となるからです。

社会福祉協議会が取り扱うもの

民間の金融機関が取り扱うもの

どこが実施するリバースモーゲージを利用するかを決めた後は、資料を入手して、利用条件を確認します。条件を満たしていれば、実施主体による審査を受け、契約、融資という流れになります。

なお、リバースモーゲージの契約を実施主体と締結する際には、相続人となることが予想される人の同意が要求されることに注意が必要です。

まとめ

このように老後に様々な用途で利用されるリバースモーゲージですが、利用条件や契約内容は複雑であり、実施する金融機関によって内容も様々なものがあります。

相続の遺産分割に備えて利用すると便利なリバースモーゲージですが、利用条件についてよく調べ、契約内容をよく確認した上で、金融機関の説明を受け、利用することが重要です。

この記事のディレクター
行政書士 保田 多佳之

このサイトの管理者。2005年から現在までウェブの企画・制作・マーケティングまで幅広く経験しています。これからも仕事の中心はウェブの仕事です。2021年から行政書士専用のウェブ制作を行っています。

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