帰化の3つの種類
普通帰化
普通帰化とは、次の要件を満たす外国人に対して許可される帰化の通称です。婚姻等による日本人とのつながりがない外国人の場合などがこれに相当します。
ただし、自国民の自由意思による国籍の離脱を認めない国が存在する可能性を考慮して、そのような国の国籍を有する者からの帰化申請については、状況により「母国籍喪失の可能性」を問わない場合もあります。
特別帰化(簡易帰化)
特別帰化(簡易帰化)とは、婚姻等により一定の要件(日本人とのつながり)を満たす外国人などに対して許可される帰化の通称です。広義では普通帰化に含まれ、具体的には、次のような緩和措置があります。
大帰化
大帰化とは、普通帰化や特別帰化の要件を満たさない(あるいは満たすが本人が積極的に帰化を申し出ない)が、日本に特別の功労のある外国人に対して国会の承認を得て行う帰化の通称です。 国籍法第9条に規定があり、現行の国籍法施行下(1950年7月1日以降)で認められた例は、ありません。
他の帰化のように本人の意思による自発的な帰化でなく、日本が国家として一方的に許可するものであるため、本来の国籍を離脱する義務は課されず、いわば「法的効力を持つ名誉市民権」となります。
帰化申請の要件
帰化の要件帰化を申請するためには、いくつかの要件を満たしていなくてはいけません。
普通帰化の要件
一般的な普通帰化を申請するために必要な条件は、国籍法5条に規定されています。
住所要件(国籍法5条1項1号)
「引き続き5年」とは、ずっと継続して日本に住むという意味です。
5年間の間で、中断があるような場合は住所要件を満たすことにはなりません。
また、たとえ5年間ずっと日本に住んでいた場合でも、不法に入国していた場合や正当な在留資格をもっていなかった場合も住所要件を欠くことになりますが、申請をして一時的・短期間に帰国した場合は住所要件に影響されません。
また、この条件は、以下の場合は、免除されます。(普通帰化から簡易帰化になります。)
能力要件(国籍法5条1項2号)
しかし、成年年齢の引下げ等を内容とする「民法の一部を改正する法律」(平成30年法律第59号)が可決・成立し、令和4年(2022年)4月1日から施行されます。この改正を受け、国籍法についても20歳以上から18歳以上と改正が行われ、同日から施行されます。
日本では20歳以上から18歳以上へ成人が変更されますが、本国では異なる年齢が成人と定められている場合には、その年齢にならないと日本において帰化許可申請はできません。
しかし、〔普通帰化の住所要件〕の免除条件4~9に該当する場合は、能力要件も免除されます。
- 日本国民の配偶者たる外国人で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有するもの
- 日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から3年を経過し、かつ、引き続き1年以上日本に住所を有するもの
- 日本国民の子(養子を除く)で日本に住所を有するもの
- 日本国民の養子で引き続き1年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時に本国法により未成年であった者
- 日本の国籍を失った者(日本に帰化した後、日本の国籍を失った者を除く)で日本に住所を有するもの
- 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者で、その時から引き続き3年以上日本に住所を有するもの
例えば、未成年の場合(20歳未満、令和4年4月1日から18歳未満)は、本人が申請しようとしても、能力要件がなく、申請できませんが、親が申請し許可された時点で「日本国民の子」となり、住所要件の〔日本国民の子(養子を除く)で日本に住所を有するもの〕に該当し、この条件は問題なくなります。実務上は、親と子を一緒に申請し親子同時に認められることになります。
素行要件(国籍法5条1項3号)
素行が善良であるとは、ひと言でいうと社会一般の人の基準で考えて、まじめな人であることを意味します。具体的には次のようなことがらで判断します。
生計要件(国籍法5条1項4号)
自分自身がお金を稼いでいなくても、同居している家族が扶養してくれている場合は、生計要件を満たすこととなります。
そして、この条件は生計をひとつにする親族単位で判断されますので、申請者自身に収入がなくても、配偶者やその他の親族の資産又は技能によって安定した生活を送ることができれば、この条件を満たすこととなります。
つまり、生活に困るようなことがなく、日本で暮らしていけることが必要で、家族全員で生活ができる収入があればいいことになります。
また、「生計をひとつにする」は、世帯よりも広い概念であって同居していなくてもかまいません。親の仕送りを受けている下宿している学生も含まれます。この条件も、〔普通帰化の住所要件〕 の条件免除6~8の場合は、免除されます。
- 日本国民の子(養子を除く)で日本に住所を有するもの
- 日本国民の養子で引き続き1年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時に本国法により未成年であった者
- 日本の国籍を失った者(日本に帰化した後、日本の国籍を失った者を除く)で日本に住所を有するもの
- 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者で、その時から引き続き3年以上日本に住所を有するもの
重国籍防止要件(国籍法5条1項5号)
ただし、「日本国民との親族関係又は境遇につき特別の事情があると認められるとき」は、この条件を満たしていなくても許可できるものとしています。
つまり、日本国民の配偶者、子等であることによる我が国と特に密接な関連があり、難民等特に人道上の配慮を要するものであることにより、法務大臣において、特に許可することが相当であると認める場合です。
日本においては一部の場合を除き、2重国籍を認めていませんので、帰化申請をして、帰化した場合は、日本国籍となり母国の国籍はなくなります。
帰化することは、自分の国籍を離れて日本国籍を取得することになるため日本人になる事になります。
憲法遵守要件(国籍法5条1項6号)
簡易帰化の要件
簡易帰化とは、日本人の配偶者や子どもなど、一定の身分関係がある人が対象となる帰化申請です。
親、配偶者が日本人である人で本人が日本人になることを希望する場合には、日本人の直系親族の血族であることから条件を緩和しようとするものです。普通帰化よりも要件が緩和されています。
(普通帰化の住所要件緩和条件に明記した1~9の条件に当てはまる場合をいいます。)
帰化が緩和されるパターン
帰化を申請する人が、以下の3つのどれかにあてはまる場合は、住所要件が緩和され、日本に引き続き5年以上、住んでいなくても帰化を申請することができます。
帰化を申請する人が、以下の2つのどれかにあてはまる場合は、住所要件と能力要件が緩和され、日本に引き続き5年以上、住んでいなくて、20歳(18歳に変更)に達していない人でも帰化を申請することができます。
帰化を申請する人がこれら4つのどれかにあてはまる場合は、住所要件・能力要件・生計要件が緩和され、引き続き5年以上日本に住んでいなくて、20歳(18歳に変更)に達しておらず、かつ自分や家族の力で生活することができない人でも、帰化を申請することができます。
大帰化の要件
大帰化とは、日本に特別の功労があるような外国人に対して認められるもので、特に要件というのはありません。
手続的には、法務大臣が国会に、特別の功労のある外国人に対して大帰化を認めたい旨を提案し、国会に承認されると大帰化が認められます。
帰化申請必要書類一覧表
- 上記のほかにも関係書類の提出が必要となる場合があります。
- 提出書類のうち、特に提示のないものはすべて各2部(うち1部は写しで可)必要です。
- 写しを提出する場合は、A4判としてください。
- 外国語文書には、A4判の訳文を添付し、翻訳者の住所・氏名及び翻訳年月日を記載してください。
帰化許可申請の手続きの流れ
- ご相談・ご依頼
- 1ヶ月程度必要書類の準備・作成・取り寄せ
- 住所地を管轄する法務局・地方法務局又は支局の国籍・戸籍課に相談
- 帰化申請当日:法務局へ帰化申請書を提出
- 1~2ヶ月法務局から面接の日時の連絡
追加提出資料の取り寄せ、提出
- 法務局で面接・法務省で審査
面接は、申請を行った法務局で、平日に行われます。
指定された日時にどうしても行けない場合は、別の日時への変更を頼みましょう。法務局での面接は、以下の2点を重点的にチェックされることになります。申請書に記載している内容の確認
申請書の内容について、担当官から質問を受けることになります。日本に来た経緯や、日本で結婚をされている場合はその経緯など。
日本語をどの程度理解しているかの確認
日本人として生活していくために、日本語の能力を確認します。
日本語を話せても読み書きがある程度できるかを確認するために、日本語の読み書きもテストされます。面接の場で、面接官の前で緊張した状況で、動機書や宣誓書を読まされることもあります。 - 5~8ヶ月法務大臣決裁、帰化許可決定
- 許可の場合に官報に公示(不許可の場合は、本人への通知のみ)
- 法務局から本人に通知、呼び出し、許可通知を手渡し、身分証明書を交付
以上のような流れになります。通常、申請から約1年という長い時間がかかります。
また、申請し受理されたので、許可されるとは限りません。(不許可もあります。)